生垣はなんの植物かご存知ですか?ほとんどの方が生垣を目にしたことがあるという方ばかりかと思いますが、それがなんの植物かを考える人は少ないのではないでしょうか?一般的に生垣に使用される植物として代表的なものが「シラカシ」です。生垣を自宅の敷地内に設置している人はご存知かもしれませんね。
生垣や植物に詳しい人であれば「生垣と言ったらシラカシ」と考える人もいるでしょう。それほど生垣にはシラカシが使用されているのです。今回はその「シラカシ」について解説をしていこうと思います。
この記事では生垣を作りたい方のために生垣に使用されることの多い、シラカシの特徴、生垣のメリットやデメリット、生垣を作る方法など細かく解説しますのでぜひ最後まで読み参考にしてください。
生垣とは
まずシラカシを解説する前に生垣について解説していきます。生垣とは「植物で作る垣根」です。垣根と言われるくらいなので名前の通り、家や道路、家や隣家などの敷地を区別するための囲いのことです。トレリスやフェンスなどといった無機質のものではなく生きた植物を用いるため「生垣」なのです。
生垣の役割
先に説明したように生垣は敷地を区別する役目を担います。隣家や道路などの境目や境界線になり内側と外側を隔てる意味を持ちます。また生垣を設置することで敷地外からの目隠しや侵入をしにくくさせる防犯などにも役立ちます。安全の確保やプライバシーの確保など様々な活躍をしてくれるため、外観だけのものではないことがよくわかります。家のデザインや目指すべき雰囲気に合わせてブロックやフェンスではなく生垣を選択するのも良いでしょう。
生垣によく使われるシラカシとは
生垣の説明をしましたので次に生垣によく用いられるシラカシについて解説していきます。まずシラカシの基本的なデータをまとめましたのでそちらをご覧ください。
- ・科名と属名 : ブナ科・コナラ属
- ・学名 : Quercus myrsinifolia
- ・英名 : bamboo-leafedoak japanese white oak
- ・原産地 : 日本、朝鮮半島、中国南西部
- ・分類 : 常緑広葉樹 高木
- ・放任樹高 : 10m~20m(剪定されず自然に育っていること)
- ・開花期 : 4月~5月(暖かくなる立春の時期)
- ・主な植栽用途 : シンボルツリー、生垣(高垣)、緑化用樹木、防風樹
シラカシは漢字で書くと「白樫」と書きます。一見、葉や幹は白くはないためなぜ白が着くのかと疑問に思う方もいるかと思います。シラカシはその自然の状態でなく、木材として使用された時の白さからその名前がつけられました。
庭木の樫といえばシラカシという人も多いと思いますが関西地方ではアラカシを多く用いられるようです。
シラカシの特徴
シラカシは大きく目立った特徴、見所はほとんどありません。ですがその普通さがどんな景観にも馴染み、誰もが求めるナチュラルさを演出してくれます。常緑樹の雑木というイメージを持つ方も多くいると思いますが、見た目の特徴にも触れていきたいと思います。
シラカシの葉
シラカシの葉はカシ類の中でも細めでシャープな印象を持ちます。そのような葉のことを細葉といいます。観賞用などに育てられる庭木の特徴で葉性は細く小さいと鑑賞価値を高める傾向にあります。シラカシは葉が繊細で綺麗なため鑑賞価値のある部類とされています。
常緑樹雑木らしい自然みを好む愛好家も多くそのシラカシの特性、魅力を最大限発揮することでナチュラルガーデンのスクリーンとして植栽されるのです。手入れの施されていない自然な里山の景観を演出したい場合におすすめできる植物の一つです。
シラカシの幹
若く育ちきっていないシラカシの幹は模様も無く、灰褐色で滑らかな無垢な印象を受けます。成長するにつれて灰黒色になり縦方向に線が引かれたような模様が刻まれるようになります。
ぱっと見の印象からクロカシとも別名で呼ばれたりします。
シラカシの花・ドングリ
シラカシの特徴の一つは誰もが知っているドングリを実らせることです。ここではそのどんぐりや花について解説していきます。
シラカシの花
シラカシは雌雄同株の植物です。雌雄同株というのは同一個体上に雄花と雌花が芽吹く植物のことで「雌雄同体」、「一家花(いっかか)」とも呼ばれます。ポピュラーな植物だとクリ、ハンノキ、キュウリ、カボチャなどが雌雄同株です。
開花期になると雄花と雌花の2種類が同時に咲き誇ります。花は謙虚に小さく咲くためあまり目立ちません。そのため観賞目的にされることはほぼないと言っても過言ではありません。雄花と雌花はそれぞれ異なる場所に咲くのが特徴です。
・雄花 : 新しく伸び始める枝の下部、または葉の下に約5cm〜11cmほど花序を垂れ下げるように咲きます
・雌花 : 枝先に1〜3個ほど花序を短く伸ばしながらパッと咲きます
シラカシのドングリ
雌花が咲き誇るとドングリが実ります。ドングリはシラカシ特有の実ではなく「樫果」と呼ばれる実でシラカシ以外の樫の木にも実ります。このドングリが地面に落ちることで新たな発芽を促し子孫を残すというサイクルになります。
シラカシのドングリは1.5cm〜2cmほどの卵型をしています。シラカシのドングリは「殻斗」が特徴的で帽子と呼ばれるように横向きに縞模様が刻まれるのです。
シラカシに限らずドングリはリスや鳥綱スズメ目カラス科カケス属に属するカケス、ヒメネズミなどの小動物の餌となります。この動物たちは集めたドングリを全て食べるのではなく、地面に埋めて貯蔵するという特性があります。この時ドングリが地面に埋められ発芽を促すことになるのです。
庭木にシラカシが適している理由
庭などの敷地に余裕がある家に植えられる植物として選ばれることが多いのがシラカシです。生垣として使用されるのはもちろんのこと私有地の「緑化」を目的に取り扱われます。
シラカシは樹高も程よく高く横にも広範囲に広がり展開するため、多く植える必要もないのでコスパという面でも優秀です。シラカシは季節によって見た目や姿を変えることがないため、自宅の景観に安定感をもたらします。存在感の強い植物ではないためシンボルツリーとして使用されることは少ないですが、メインを盛り上げる脇役としてのキャストで景観を支えます。
またシラカシは手入れが少なく済むので育てる人としても負担はとても少ないです。剪定をせずとも生い茂ることなく自然に綺麗に育ち、秋から冬などの寒い時期になっても葉が枯れることはないため落ち葉広いなど掃除の手間もほとんど必要ありません。
安価で剛健、健やかに育ち背も高くなるのでリーズナブルに良い効果を期待することができます。
シラカシをシンボルツリーにするには?
シラカシをシンボルツリーにすることは少ないのですが、シンボルツリーにできないわけではありません。もしシンボルツリーとして植栽したいと考えるのであれば以下のシーンがオススメです。
・マンションやアパートなどのメインエントランス周辺へ植栽
・オフィスビルや施設のシンボルツリー
・商業施設やデパート、工場など規模感の大きい施設へのシンボルツリー
・予算を抑えて植栽したい場合や育てる過程も楽しみながら大きなシンボルツリーに成長させたい
これらを意識することでシラカシをシンボルツリーにすることは可能です。シンボルツリーに適している植物はシラカシ以外にも多くあるので木になる方はぜひ調べてみてください。
シラカシで生垣を作る理由
シラカシは生垣に向いている
シラカシが生垣に向いている一つの理由は株立ち(茎の根元から数本の茎が立ち上がっている状態)で育てられる常緑樹だからです。株立ちの木は枝を横に広がるように増えるので生垣として目隠しの役割など最適な効果を発揮します。
また冬などになると落葉樹は葉を落としてしまうため、隙間ができ目隠しの効果を無くします。シラカシは常に葉をつけているので年中目隠しの効果を出します。
また目隠し効果はあるものの枝や葉っぱが密集するように育つわけではないのでほど用意透過性もあり、圧迫感を少なくしてくれます。ナチュラルに自然な形で生垣を作ることができるのです。
背が高くなる
野生のシラカシで長い年月が経っている個体となると約20mほどまで成長します。そのため剪定などをうまく行うことで好きな高さまで調整することがあります。自宅のエクステリアなどに合わせて高さを変えたりとその柔軟性が生垣に向いている理由になります。壁のように強固で立派な生垣を目指すのであればシラカシが一番向いているでしょう。
丈夫なので育てやすい
シラカシは剛健で暑さ寒さ関係なくすくすく育ちます。また土壌を選ばない生命力で日陰でも問題なく育ってくれます。そのため育てるのに細かいケアが必要なく神経を使う必要もありません。もちろん肥料は要らず、水やりも最小限で十分です。強剪定などの刈り込みにも耐えられる生命力を持っているので自分が理想とする形に成型することが可能です。
シラカシを生垣にする時の注意点
庭木として十分すぎるパフォーマンスを発揮するシラカシですが、いくつか注意点を紹介します。
・高く成長するのが早いため定期的なカット対応が必要になる
・生育力強く、理想とする形を持っている人は整形的な管理が必要
・横にも広く成長するので幅を狭く維持したい方には手入れが面倒
・毛虫(イガラ)が発生する可能性が高い
・成長により越境や道路、隣家まで枝伸びする可能性がある
シラカシの育て方
シラカシは手間のかからない木だと紹介しましたが、縦方向への成長が強いため栄養が上にいきがちです。そのため幹の下部は栄養が少なく枯れてしまうということが稀に起きます。そういったことがないように健康に育てる方法や手入れ方法を紹介するのでぜひ参考にしてください。
水やり
自然な雨が定期的に降ってくれれば水やりの必要はありません。ですが夏場など真夏で気温の高い中、地面が乾くくらい雨が降らない日が続く場合はやりすぎくらい水をあげるようにしましょう。
肥料
シラカシは肥料がなくてもしっかりと育ってくれます。そのため植栽したばかりでも問題なくすくすくと育っているのであれば肥料を与える必要はないでしょう。もし肥料を与えるのであれば栄養を吸収しにくい2月ごろに腐葉土や有機肥料を土に混ぜるように埋めるくらいで事足りるでしょう。これらの肥料は土壌を良い方向に改善しじっくりですが長期に効果を発揮してくれまう。肥料を与えるというのではなく成長するために適した、育ちやすい環境作りをしてあげればシラカシは十分育ってくれます。
病気や害虫被害
シラカシは生命力が高いため病気や害虫にも強い木です。ですが稀にうどん粉病やすす病などに感染してしまいます。
うどん粉病は土の中で繁殖したカビが原因で発症します。うどん粉病に適した殺菌剤を使用することで菌自体の繁殖を最大限抑えることで発症を未然に防ぐことができます。すす病もカビが原因ですがカイガラムシなどといった害虫のフンから発生するカビが原因になります。これは虫を寄せ付けないための植物用の殺虫剤を使用することで防止することができます。
また害虫は湿度の高い空間、カビが生えているエリアを好むため湿気が籠らないための工夫が必要になります。適度に剪定をすることで枝葉を少なくし通気性をよくしたり、日当たりをよくしてあげることでこれらの工夫ができます。
シラカシの形を綺麗に保つ方法
シラカシは放置していても問題なく育ちますが適度に剪定をしてあげることで健康を保つことができますし、理想の形にしておくことができます。
剪定時期
木はエネルギーが有り余っている時期に剪定をしてあげることでダメージを最小限に抑えることができます。逆に体力の無い時期に剪定をすることで大きな負担になり枯れてしまう可能性もあります。
シラカシは生命力が強いため剪定により枯れることは少ないですが比較的、体力が落ちている真冬の時期は避けてあげましょう。また成長期となる真夏に剪定を行うと、切られた分さらに成長しようと生育スピードを早めてしまい不自然に成長し樹形を乱し、望んだ樹形からかけ離れてしまうという結果に繋がります。
剪定方法
シラカシの剪定は一般的な剪定方法と同じように行って問題ありません。基本的には間引き剪定、切り戻し剪定、刈り込み剪定です。
間引き剪定は枝の数を減らすことが目的で適度に枝の根本から切り、風通しをよくしたり日当たりをよくすることが目的になります。
切り戻し剪定は上へ上へと成長する枝をもとの高さ、長さに戻すように調整しながら切ることです。生垣などにシラカシを使用している場合、高さを制限することができます。また下枝がなくなることで貧弱化を抑えることができます。
刈り込み剪定は外側から見た際に綺麗に見えるよう表面を整える剪定方法です。刈り込み用のハサミやバリカンを使用し真っ直ぐな樹形を目指しましょう。
まとめ
育てやすくパフォーマンスにも期待できるシラカシ。目隠しなど生垣にも適しておりシラカシを好んで私有地に植栽している人も多くいるでしょう。生命力が強いため大胆に剪定をしたとしてもよほどのことが無い限り枯れたりはしませんが、真冬の弱っている時期は大きなダメージとなるので気をつけましょう。
シラカシは成長していくとかなり背が高くなるので個人や素人での剪定が難しくなる場合もあります。そんな時は無理せず業者に依頼することも視野に入れましょう。
シラカシを綺麗に保つにはある程度の剪定なども必要になりますが自然なスタイルが好きであれば無理に選定する必要もありません。自分が望むシラカシの姿を決め、それに合わせるように育てていきましょう。
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